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設計者のための免震入門(2) 免震構造と耐震安全性
 
免震建築の優位性
 通常の地震入力を想定した場合、達成される免震建築のイメージは、以下の様に考えられる。
1) 上部構造の応答は弾性域にあり、弾性設計,許容応力度設計でよい。基礎は、鉛直荷重が基本で地盤と一体になれば良い。地震時、地盤が崩壊しないように対策を立てる。
2) ベースシヤー係数は0.1程度、上部構造の層間変形角は上部構造の剛性にもよるが1/1000以下が可能。
3) ねじれ応答は免震層レベルで処理する。耐震壁は、上部構造の剛性の向上のみを対象とし、上部構造平面の機能に合わせて自由に配置すれば良い。従って、サッシ,間仕切壁等は構造体に緊結すればよいということになる。
4) 30階建て程度の超高層建築へ免震構造を適用した場合でも、上部構造層間変形の低減など十分な免震効果が期待できる。ただし、上部構造の基礎固定時の周期と免震周期の比率(あるいは剛性比)に注意が必要。積層ゴムへの引張力の作用は、免震性能を高めることで低減可能。
 以上、上部構造が同一であれば、在来構造に比べて免震構造の方が安全性が格段に大きいことは明白である。
 文献2)において免震構造の利点が次のように要約されている。
(1) 免震構造はエネルギーの授受に関して最も単純な構造物であり、応答予測にかかわる不確定性が少ない。
(2) 鉛直支持部材としてのアイソレータとエネルギー吸収部材としてのダンパーが明確に分離されており、それぞれの性能が明確に表示できる。
(3) 上部構造たる建物部分は無損傷にとどめることが可能であり、応答加速度を低減できることから、設備機器の損傷も回避できる。
(4) 免震層は柔要素(アイソレータ)と剛要素(ダンパー)との混合構造であり、エネルギー吸収効率が良く、残留塑性変形がほとんど残らない。
 また、「免震構造では、免震層を特別に設ける点が耐震構造に比べて不利とみられがちであるが、以上のような優位性を主張し得る免震構造は、免震層を導入することにより明確な機能分離を達成し、それにより高い耐震性能を獲得した構造である」とも述べられている2)


水平動と上下動
 地震動に対する構造物の安全対策は、まず水平動を処理することが大切である。地震入力の大きさを測る物差しは、未だ明快になっていないが、一応加速度で考えれば、水平動は鉛直動に比べて2〜3倍位大きいことは、大方の共通認識であろう。免震構造を採用した建物では水平方向加速度が1/2〜1/3に低下している。現在のところ免震構造では鉛直方向に対しては免震効果を期待していない。そのため、鉛直方向加速度は若干増幅している。建物内部に精密機器や美術品などが存在するために、内部空間の高度な安定性が求められる場合には、鉛直方向だけ免震するような床免震や免震装置(水平加速度は十分小さくなっているので、その機構は単純なものとなろう)を追加することで3次元免震を実現することも容易である。
 建築構造物は、常時鉛直荷重1Gを受けており、これに鉛直方向の加速度が作用するのである。仮に上下動を0.3Gとすれば、上下動の方は1Gに対して1.3Gになるに過ぎない。一方、水平方向加速度は常時建物に作用しているわけではなく、地震発生とともに突如大きな加速度が作用する。従って、建築構造の耐震構造安全の立場からは、水平動が問題で鉛直方向荷重としての上下動は無視し得ると考える。また、大きな鉛直方向加速度が入力された場合でも、積層ゴムの形状を適切に設計することで水平変形能力と荷重支持能力が維持され、建物の地震時安定性を確保することが可能である。





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