免震構造を成立させる為に必要なアイソレータ(積層ゴム部材)の開発が、日本では1980年代から始まった(図3)。 |
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積層ゴムの実用化を受けて、1983年に我が国で初めての免震建物(RC造2階建て住宅)が千葉県八千代市に建設された(図4)。積層ゴムの開発と超高層建築で養った解析技術により、免震建築の性能が認められ、現在では免震建築普及の時代に入っている。 |
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地震は一種の振動現象であり、構造物は地震動に対しても固有の振動応答特性を持つので、入力となる地動の特性と構造物の特性とをうまくアレンジしてやれば、建物が受ける地震の影響をうんと小さくすることが出来る。この特性をいかに利用するかが、耐震設計の大きな眼目になっている。 |
建物が地震力を受けて揺れるとき、その対処の仕方は大別して、以下の3つの方法がある。 |
1) |
地盤に建物を固定して、地震による建物への入力エネルギーを、建物全体をたわませて吸収してしまう。 |
2) |
構造骨組のほかに建物内部にたわみが集中する場所や、部材等を併設しておいて、そこへ地震のエネルギーを集中消費させる。 |
3) |
建物と地盤とを絶縁して、地盤の動きが直接建物に伝わらないような柔らかいバネをいれて、地動が建物に伝わらないようにする。 |
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1)が在来型の耐震設計で、2)が制震構造の設計法で、3)が免震のやり方である。したがって、免震の考え方は、地震の力を骨組みで受けずに、サラリと逃がしたり、チグハグの動きをさせたりして、すり抜ける方法である。この方法だと、1)2)の方法に比べて骨組みの変形が少なくなるので、その分、骨組みの安全性は高くなり、また揺れても、やり方によって船が水の上でゆっくりゆれるように静かに動くので、室内の機器の破損等の心配がなくなるという利点がある。 |
振動学の観点からは、構造物は頑丈につくればつくるほど、建物の振動周期が短くなり、地震により構造体にかかる力が大きくなる。地震を伝える地盤にも似たような性質がある。それで、固い良質の地盤に頑丈な建物を建てる場合は、ますます大きな地震力が作用する。このいい例が、原子力発電所の構造である。 |
そこで、固い家を柔らかい地盤に建てると、地盤がクッションの役目を果して建物に加わる地震力は随分小さくなる。免震構造の先駆者の一人である岡隆一氏はこれを"褥(ジョク、柔らかい敷物の意)作用"と言っている。 |
しかし、この様な褥作用を期待できるような地盤は柔らかいので、地震で地盤が大きく変形し、不同沈下もからんで、建物の被害を大きくする可能性がある。建物の重量をうまく支えて不同沈下を防ぎ、地震には柔らかく褥作用を出させるのが免震アイソレータ(積層ゴム部材)の役目である。建築の方は、従来通りの建て方で建てて地盤の固さとの取り合わせをアイソレータでやろうというのである。 |
この方法が耐震設計の一つの柱になれなかったのは、本当に建築に相応して、安くて取扱が簡単で、信頼できるアイソレータができなかったことによる。その上、振動理論を使って建築を設計する具体的な技術が十分に進んでいなかったために、思い切った実行に移りがたかった事情もある。更にもう一つ、法制の運用の硬直性もまたその要因の一つであったことも忘れてはならない。 |