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免震構造に関する研究 建築構造物の振動問題に関する研究 4menshin.net
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設計者のための免震入門(1) 地震対策としての免震構法
 地震に対する構法には、従来からの耐震構法に加えて、免震構法、制震構法がある。免震構造の設計では当初から動的設計が行われてきている。現在では、等価線形化手法に基づいた計算により免震建物の応答を検証する方法も提案されている。このような手法を用いる場合でも、計算手法の根拠や適用範囲、建物の動的挙動、免震部材のモデル化の妥当性などについて正しい認識を持つことが不可欠である。
 ここでは、動的設計に関する問題点、免震構造の歴史的背景およびその効果について解説する。
耐震設計と解析技術
 我国における建築物の耐震性は、濃尾地震(1891年)を契機にクローズアップされるようになった。翌年の1892(明治25)年には震災予防協会が設立され、地震復興家屋構造の指針として、木構造の構造方法に対する提案がなされた。この提案は1914(大正3)年の佐野利器による「家屋耐震構造論」の中に引き継がれることになる。
 この様に我国で建築物の「構造安全」や「耐震性」が本格的に議論されるようになって以来、100年以上が経過したことになる。
 耐震設計を進めるにあたっては次のような段階が考えられる。
a) 地震動の予測
b) 上部構造の応答予測
c) 骨組の設計用応力予測
d) 部材断面の決定
いわゆる外乱から始まって、部材決定にいたる流れの中で、a)からd)になるに従って話が細かく、イメージが明確になる。現実の科学、技術のレベルではやむを得ないことで、1960年代以前迄は、a)及びb)の問題は半ば放棄して震度法という名の約束事を法制化し、c), d)を静的な取扱(地震動の効果をある一定の水平力が作用しているものと考え)で済ませ、実態としての動的挙動は全く設計判断に任されていたのである。この法制化に重大な影響を与えた佐野利器と眞島健三郎両氏による柔剛論争(1920年代〜30年代)は、いま読み直してみても参考になる。設計判断の上からは、両者共に論理がかみ合わず、うやむやに終わる観を呈しているが、ある種の部分的判断資料が提供されたことは間違いない。この様な状況下で有能な設計者は法制とは別に自らの責任において動的設計と静的計算とを使い分け、辻褄合わせをしていたのである。
 東京大学名誉教授梅村魁博士は、昭和46(1971)年6月の建築雑誌に、次のように述べられている。
 『最近非常に進んだのは、解析技術の方であって、肝心の設計技術の方はそれほど進歩していない。われわれは、解析技術の進歩が即、設計技術の進歩と思い違いをしてはならない。各種の構造基準は解析技術的な面が多いし、最近の動的解析は、まさにその名のとおり解析技術である。動的設計などと呼ばれているけれども、耐震設計に関する限り、昔から動的設計であって、その解析技術が長年静的であっただけの事である。』
この指摘は現在のようにコンピュータによる解析が普及した現在においても当てはまるだけでなく、構造設計に携わる専門家は心に留めておくべきことではなかろうか。





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