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設計者のための免震入門(6) 積層ゴムの実験による性能評価
 
 
水平特性
 図6に面圧を変化させた圧縮せん断試験による水平荷重−水平変位関係と鉛直沈み込み量−水平変位関係を示す1)7)。試験体は500-3.75×26(全ゴム厚97.5mm, S1 =33.3, S2 =5.1)で、せん断変形量は±300mmである。なお、面圧300kg/cm2 [29.4MPa]の履歴曲線が非対称であるのは、試験機の摩擦の影響である。面圧が大きくなるに従い、履歴ループの面積は徐々に大きくなる。これは、高い面圧によりゴム分子間での摩擦が大きくなるためと思われる。しかし、履歴曲線の勾配にはほとんど変化が見られない。特に、面圧200kg/cm2 [19.6MPa]までは履歴曲線にほとんど変化がない。鉛直沈み込み量は圧縮荷重が大きくなるに従い大きくなるが、面圧300kg/cm2 [29.4MPa]、せん断変形300mmの時でも、鉛直沈下量は約2mmと非常に小さい。水平性能としては水平荷重と水平変位の関係が着目されがちであるが、水平変形時の鉛直沈み込み量の程度は積層ゴムの鉛直荷重支持能力や水平変形能力を評価する上で重要な指標となる。
図6 圧縮せん断試験での履歴特性(500−3.75×26試験体)
 図7には、破断試験時の荷重−変形関係を示す。図中には500-3.75×26試験体の他に1次形状係数が約18の500-7×14試験体の結果も示されている。2次形状係数はいずれも5である。試験時の面圧は200kg/cm2 [19.6MPa]と300kg/cm2 [29.4MPa]である。500-3.75×26試験体ではせん断変形率250%程度まで面圧の違いによる影響は見られずほぼ同一の水平剛性を示している。一方、500-7×14試験体では面圧300kg/cm2 [29.4MPa]の時、初期水平剛性の低下が著しい。しかし、いずれの場合もせん断変形率300%程度以上の領域でハードニング現象を示し、せん断変形率400%付近で破断している。写真3に500-3.75×26試験体の面圧200kg/cm2 [19.6MPa]時のせん断変形状態を示す。
図7 圧縮せん断破断試験(500−7×14、500−3.75×26試験体)
写真3 圧縮破断試験の状況(500−3.75×26試験体)
写真3 圧縮破断試験の状況(500−3.75×26試験体)
 図8には図7で示した500-3.75×26試験体の相似形である800-6×26試験体の限界試験の結果8)を示す。面圧100 [9.8MPa]〜300kg/cm2 [29.4MPa]まで変化させても破断特性の変化は小さい。また、図7の履歴曲線と比較してもほぼ同じ特性であることが分かる。面圧が3倍変化しても水平剛性や破断変位が変化しない積層ゴムを用いることが免震構造の設計や解析の信頼性を高めるために不可欠であると考える。
図8 圧縮せん断破断試験(800−6×26試験体)
 座屈荷重の計算式より、各試験体の座屈応力度を求めれば、500-7×14試験体が385kg/cm2 [37.7MPa] ( G =4.5kg/cm2 [0.44MPa], ξ =0.95)、500-3.75×26試験体が668kg/cm2 [65.5MPa] ( G =4.5kg/cm2 [0.44MPa], ξ =0.9)となる。同式によれば、図7の荷重−変形関係は、せん断変形250mm(有効支持面積が40%)を越えたあたりで座屈し始めることになる。しかし、このような現象は認められない。文献9)でも、座屈評価式と実験値との対応から、せん断変形量が直径の1/2程度よりも大きな場合には同式で予測される限界変形以上の変形能力が期待されることが示されている。これは、せん断変形が大きくなるに従いゴム材料のひずみ硬化によりせん断弾性率 が大きくなる非線形性による影響であると思われる。これより、2次形状係数が5程度の扁平な積層ゴムでは座屈応力度 σcrの1/2程度の面圧下でも十分な変形能力(直径の75%以上)を発揮できることが判る。ただし、2次形状係数が小さな積層ゴム、あるいは中心孔の大きな積層ゴムの場合のせん断変形時の挙動については、実験データが十分蓄積されていないため、使用条件の設定に当たっては慎重に行われる必要がある。
 また、直径が1mを超えるような積層ゴムの限界変形試験は多くない。大口径積層ゴムについても限界変形性能試験を実施することが必要となるが、このような試験を実施することは現状では容易ではない。大径積層ゴムを用いるのは大きな圧縮軸力を支持する必要があるためであろう。この場合、建物の柱下に2体の積層ゴム(性能が十分検証された)を設置することも有効な選択肢の一つであると考える。





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