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設計者のための免震入門(9)免震建物の地震応答特性
 
 
1質点系応答との比較
 図1の11質点系振動モデルと1質点系モデルとの免震層の応答を比較することで上部構造の影響を検証する。免震層の復元力特性は図8で示したバイリニア型とし、免震周期 Tƒ が3,4,5秒、ダンパーの降伏せん断力係数 αs は2,4,6%で降伏変位は2cmとした。上部構造の1次周期は、 Tƒ / Ts が0.5, 1, 1.5, 2, 3, 4, 6となるように決定した。上部構造の減衰は3%とした。
入力地震波には、図2に示す3波を用いた。
 解析結果はいずれも同様の傾向を示しているので、図10には Tƒ =4秒、 αs =4%のモデルにKOBE波を入力した場合の最大加速度応答と相対変位応答を示す。上部構造の周期が長くなるほど、応答加速度と層間変形は大きくなることが分かる。 Tƒ / Ts が2程度以上では免震効果が大きいことがわかる。
11質点系モデルの解析結果と同じ免震層の特性を有する1質点系モデルの応答結果を比較する。1質点系モデルでの免震層の最大変位応答に対する多質点系モデルの応答の比を、Tƒ / Ts との関係で図11に示す。同様に、最大ベースシア係数の比率も示す。両図には解析で用いた全ての地震波や免震層の特性のケースがプロットされている。Tƒ / Ts が2より小さい領域では、応答比のバラツキが大きく、1質点系モデルの応答に比べて小さな応答を示す。逆に、Tƒ / Ts が2以上となると応答比は0.8〜1の範囲となり、1質点系と多質点系モデルの最大応答に大きな差は見られなくなる。特に、Tƒ / Ts =6前後になるとほぼ同じ最大応答を示すことがわかる。
免震構造の目的が上部構造を1体として並進運動する、すなわち1質点系と同様な応答を示すことであれば、Tƒ / Ts は少なくとも2以上を確保することが必要条件となる。


地震入力レベルの影響
 免震構造は設計地震入力に対して免震層の特性を自由に設定できる。このことは、設計地震動に対して応答が最適化されること意味しており、それよりも小さな地震動、逆に大きな地震動に対して、どのような応答を示すかを把握しておくことは重要である。
 ここでは、先ほどと同じ11質点系モデルを用いて、入力レベルを変化させて応答解析を実施する。免震層の特性はTƒ =4秒、 αs =4%である。入力地震波には、EL CENTRO(NS)波を用い、入力レベルは速度レベルで5cm/s(最大加速度51gal)、10cm/s(102gal)、25cm/s(255gal)、50cm/s(510gal)、75cm/s(766gal)、100cm/s(1021gal)と変化させた。
 最大加速度応答の分布と入力加速度で応答を除した応答倍率を図12に示す。入力レベルが大きくなるに従い、加速度応答は全体的に大きくなるとともに、あるレベルを超えると下層部と上層部で加速度応答が特に大きくなる。これは上部構造の2次振動モードの影響である。加速度応答倍率では、入力レベルが小さい範囲では応答倍率は1に近く、加速度低減効果が小さいことが分かる。入力レベルが大きくなると加速度低減率は0.5程度となる。
 この解析では、応答の大きさが変わっても免震層の特性が変化しないことを前提としたが、応答変形が小さい場合、免震層の復元力特性が設計用復元力特性と同一で良いのかについては検証されるべきである。また、免震層の応答変形が大きくなった場合、積層ゴムであればハードニングの影響により水平剛性が大きくなるなどの影響を考慮する必要があるかもしれない。
 このように免震構造の地震応答特性を評価するにあたっては、入力地震動の設定、免震部材の復元力特性の設定などについて十分慎重な姿勢が望まれる。
 ここで触れていないねじれ応答や2方向入力などの解析については「免震構造設計指針(日本建築学会、2001年版」に詳しいので参照されたい。
参考文献
1) James Kelly : "Earthquake-Resistant Design with Rubber", 2nd Edition, Springer, 1997
2) R. I. Skinner, W. H. Robinson, G. H. McVery : "An Introduction to Seismic Isolation", John Wiley & Sons, 1993
3) 田辺太一、高山峯夫他:免震構造のFeasibility Study 実在超高層RC造へのBase Isolation Systemの適用、日本建築学会大会学術講演梗概集、1989.10
4) 小倉桂治他:高層免震建物の地震応答特性に関する検討、日本建築学会技術報告集、第5号、1997.12





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