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免震構造に関する研究 建築構造物の振動問題に関する研究 4menshin.net
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設計者のための免震入門(9)免震建物の地震応答特性
 
 
振動モデルと地震入力
 免震構造の時刻歴応答解析には、上部構造を一つの剛体とみなした1質点系モデル、各階床位置に質量を集中させた多質点系モデル、並進運動にねじれ応答を考慮したねじれ振動モデル、さらには立体フレームとしてモデル化するなど、解析の目的に応じたモデル化がなされている。地震動は動的であり、構造物も動的に応答するので、構造物の解析も動的解析とするのが本来の姿である。しかし、単に詳細なモデルを用いることが解析結果の精度を向上させることに直結しないことには注意がいる。力学モデルの設定では、構造物の実挙動をできるだけ正確に予測し評価できることが肝要となる。
 ここでは、主に免震層の応答に着目して図1に示すような多質点系モデルを設定する。質点数は11、上部構造の各階質量は980tonで一様、水平剛性の分布は台形分布で最上層は最下層の1/2の剛性としている。
 解析に使用する入力地震波は、 EL CENTRO(NS)波を最大速度50cm/sに規準化した波形、兵庫県南部地震のときに神戸海洋気象台で観測されたKOBE(NS)波、および模擬地震動BCJ-L2波である。BCJ-L2波は日本建築センターで作成されたものであり、改正建築基準法で新たに規定された地震動の加速度応答スペクトルと同形状のスペクトルに適合している。図2に地震波の時刻歴波形を示す。EL CENTRO(NS)波は約30秒間くらい継続しているが、KOBE波の主要動は10秒間くらいである。逆にBCJ-L2波は120秒という継続時間をもつように作成されており、観測地震波形とは趣が異なる。これらの地震波の応答スペクトル(減衰5%)を図3に示す。図中の直線は建物の周期を表しており、
で求められる。ここで、SD は図3の横軸である変位応答を、 SA は縦軸の加速度応答を表す。KOBE波は周期1秒前後で非常に大きな応答を生じさせる。BCJ-L2波の加速度応答はKOBE波ほど大きくはないものの、長周期側で変位応答が大きくなる特性をもっている。
 免震構造、特に免震部材では、時刻歴応答解析の結果に基づいて直接設計することが可能である。この様な場合、入力地震動の設定が特に重要な意味を持つが、建物への設計地震入力の設定は免震建物に限らず大きな課題である。入力地震動の設定に当たっては、免震建物と敷地地盤の振動特性、および地震工学などの知見を十分に取り入れながら適切にすることが求められる。


免震層に必要な柔らかさ
 免震構造は免震層に変形を集中させて地震エネルギーを吸収するシステムである。免震構造を成立させるためには免震層はどれほどの柔らかさが必要となるのか。
 図1に示した振動モデルの1次固有周期を1秒となるように各層の水平剛性を決定する。減衰は剛性比例型減衰として1次モードに対して3%とする。このモデルを基準モデルとする。基準モデルの1層目の水平剛性だけを、1/2、1/10、1/30、1/100に低下させて、時刻歴応答解析を行った。EL CENTRO(NS)波を入力した解析結果を図4に示す。加速度応答だけであれば水平剛性を1/30程度でも免震効果(加速度応答が各層同一となる)が発揮されているようであるが、変位応答からは各層の層間変形を十分小さくするには1/100程度まで低下させることが必要になると言える。第1層の剛性を1/2にした場合、1次固有周期は1.07秒、1/10では1.56秒、1/30では2.41秒、1/100では4.21秒となり、周期の比率で言えば4倍程度となる。





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