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設計者のための免震入門(4) 積層ゴムの構造と特徴
 
 
積層ゴムの構造
 積層ゴムの形状は、薄い鋼板(中間鋼板)と薄いゴムシートを交互に積層した構造となっている。図1にゴムブロック(単層ゴム)と積層体との比較を示す。積層ゴムのゴム総厚に等しい厚さのゴムブロックを考える。圧縮時には、ゴムブロックは大きく沈み込み、ゴムが横方向へはらみ出し、圧縮荷重に対しては支持能力が低いことが容易に想像できる。一方、積層体にすれば、ゴム1層の厚さが薄くなるため、横方向へのはらみ出しも非常に小さくなる。このため、圧縮荷重に対しても沈み込み量を小さくできる。せん断変形時には、鋼板がせん断変形を拘束しないとすれば、ゴムブロックのせん断変形と基本的に同じであり、水平剛性はゴム自身の柔らかさとなる。
 積層ゴムの形状を決定するパラメータはゴム直径D、ゴム1層厚 tR 及びゴム層数 n である(図2、写真1)。これらは1次形状係数 S1 と2次形状係数 S2 としてまとめられる。1次形状係数 S1 は、従来防振ゴムの分野で単に形状係数として呼び用いられているものと同じであり、次式で定義される。
2次形状係数 S2 は、積層ゴム用に新たに導入された係数であり、
として定義される。 S1 は主に鉛直・曲げ剛性に、 S2 は主に座屈荷重や水平剛性に関係している。円形断面の積層ゴムについて、 S1 と S2 の算出式は次式となる。拘束面積は中間鋼板によりゴム層が拘束されている面積であり、中心孔(直径 ds )が存在する場合には拘束面積から差し引く必要がある。
(1)
 積層ゴムを用いた免震システムとしては、天然ゴム系積層ゴムと各種のダンパーを組み合わせたシステム(機能分離型)、及び高減衰ゴム系積層ゴムや鉛プラグ挿入型積層ゴムのようにアイソレータとダンパーの機能を一体化したシステム(機能複合型)などが挙げられる。免震建物の地震時応答は、アイソレータ(周期特性)とダンパー(減衰量)の特性により大部分支配されている。このため、免震部材の設計では、ややもすると周期と減衰の調整だけを目的として免震部材が選択される可能性を有している。免震部材の設計・選択に際しては、免震部材は構造部材であるとの認識に立って、工学的厳密性をもってその耐久性や限界性能までも含め調査した上で用いることが必要であると考える。
 現在まで、アイソレータやダンパーなどは"免震装置"、あるいは原子力の分野では"要素"とも呼ばれている。"装置"とは、大辞泉(小学館)によれば「ある目的のために、機械・器具などをそなえつけること。また、その設備」とあるように、機械部品のイメージが強いように思われる。また、免震構造の設計は在来型構造設計の範疇にあると言える。従って、積層ゴムアイソレータとダンパーには他の構造部材と同じように設計のための工学的定量性が求められている。設計者は積層ゴムアイソレータとダンパー(免震部材と総称する)が柱や梁と同じ構造部材であることを認識し、免震部材のサイズ、性能を決定しなければならない。そこで、アイソレータやダンパーを"部材""免震部材"と呼ぶべきである。免震材料と呼ぶことは、アイソレータの役割を無視した呼称と言わざるを得ない。





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