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設計者のための免震入門(3) 免震建築の構造計画
 
 
免震建物の構造計画
 免震建物の構造計画では、免震層をどこに置くか、即ちどの層で絶縁するのかが、免震構造の応答や経済性を含めて最も重要となろう。図4に免震層の設置階の概念図を示す。
図4 免震層の挿入位置
 地下階が無い、もしくは地下1階程度の建物であれば図4の(a)の位置で建物全体を免震構造とすることが最も有効である。地下階が深くなれば、建物が水平移動するためのクリアランスも深くする必要がある。地表部分に免震層を設置すれば(図4の(b)の位置)、地下階と地上階との移動手段(階段、エレベータなど)に工夫が必要となる。いずれにしても建物の用途、免震の効果、施工方法などを考慮して決定する必要がある。
 建物の中間階に免震層を設置したり、柱頭に直接積層ゴムを設置し免震層を駐車場などとして利用することもある(図4の(c)の位置)。柱頭に積層ゴムを設置する場合には、柱の曲げ変形により積層ゴムに回転が発生する影響や火災に対する配慮が必要である。
 免震層の設置位置を上層階とした場合(図4の(d)の位置)、免震層より下の構造との関係、免震層上部への入力地震動の影響など充分な検討が必要である。この場合、免震構造というよりは、一種の制振構造と呼んだ方が適切な場合もある。
 水平クリアランスの大きさは、免震層の水平変形量の大きさに依存している。建物平面形状が細長い場合には建物端部にはねじれ応答も考慮する必要がある。クリアランスの大きさは、免震層の設計変位の大きさや想定している地震動のレベルに基づいて決定することになる。クリアランス部分は、地震時には可動するため、この部分に人が近づかないようにしたり、物が置かれないような建築計画上の工夫も必要である。
 免震建物の性能を高めるためには、免震周期を伸ばすと同時に免震層の変形能力も高めることが必要である。このためには、建物荷重を1つの柱にできるだけ集中させて、これを大きなサイズの積層ゴムで支持するのが効果的である。特に、上部構造が軽量な建築では、この点に対する配慮が欠かせない。このことを踏まえた上で免震建物の構造計画を行うことが重要となる。従来は、単に在来型の上部構造を免震層の上に載せただけという免震建物も見受けられた。これからは免震建物の特性を十分理解した上で高性能な免震建築が実現されることが望まれる。
 上部構造の高さの限界は、積層ゴムの引き抜き限界により大部分決定される。図5に示す様な上部構造を高さ Η 、幅 Β の剛体と仮定した時の応答について検討する。積層ゴムが幅 Β 内に均等に 列配置されているとした場合、転倒モーメントの作用により最外縁の積層ゴムの圧縮荷重が0となる時のせん断力係数 α0 は、次式で表せる。このせん断力係数は建物高さの中央(Η / 2)に水平力が作用するとして算出している。
(4)式
この時、反対側の最外縁積層ゴムには2倍の圧縮荷重が作用していることになる。ここでは、積層ゴムに引張力を作用させないことを1つの設計条件とする。上部構造のせん断力係数 α0 は、免震層のベースシア係数 α1 を用いて、と表せる。ここで、 α0 はダンパーの耐力による割増係数であり、水平変形量25〜50cmの範囲では、最大でも1.07程度である。 α2 はダンパーの初期剛性による割増係数で、1.0〜1.5倍の範囲で変化する。よって、割増係数としては、初期剛性による影響を考えれば良いことになる。
 (4)式より、 のとき、 α0=Β / 3Η となる。 3〜20の範囲では、、 α0=(0.67〜0.37)Β / Η である。以上より、 Β / Η の限界はおおよそ次式で与えられる。





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