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設計者のための免震入門(9)免震建物の地震応答特性
 
 建築基準法の改正を受け平成12年6月に限界耐力計算をはじめとする構造関係の政令・告示が施行された。やや遅れて平成12年10月17日には免震建築物及び免震材料に関する技術基準(平12建告第2009号及び2010号)が制定された。これらの告示は建築基準法令にはじめて取り入れられた免震建築物に対する技術基準であり、限界耐力計算と同等以上に安全性を確認できるものとされている1)2)。計算方法は基本的に限界耐力計算と同じであるが、免震層の変形を評価することに重点がおかれている。ここでは告示の計算手法の概要を説明し、告示の手法による応答評価の妥当性、告示に従った場合に達成される免震性能について考察する。
 なお、告示では粘性系ダンパーを使用した場合の計算方法も示されているが、ここでは説明を簡単にするために免震システムとして積層ゴムアイソレータと履歴型ダンパー(バイリニア型)を組み合わせたシステムを対象とし、告示の計算手法でもこのシステムに関係する項目を紹介する。


告示の計算方法
 本告示の適用範囲は建物高さ60m以下、平面形状の辺長比が4以下、地盤種別は1種・2種地盤(ただし液状化なし)程度であり、戸建て住宅をはじめ大部分の建築物に適用可能と言われている。以下の計算方法では一般の建築物(住宅を除く)を対象とする。計算方法の基本は上部構造を1質点と考え等価線形化手法を適用している。以下に示すように告示の計算式そのものは非常に簡単である。しかし、式中に使用されている種々の係数の意味や影響については不明な点も多く、適用に当たっては数値の意味を十分検討する必要がある。


地震力の設定
 免震層に作用する地震力Qは(1)式で規定される。
(1)
 Mは上部構造の総質量、Zは従来の地域係数、 Ts は(5)式に示す免震層の周期(等価周期)である。 S0 は他の建築物と同じく工学的基盤で規定される加速度応答スペクトル(h=0.05)である。図1に示すように短周期領域では800gal一定の加速度応答を示し、長周期領域では81.5cm/sの応答速度をもつように設定されている。
 免震建物の周期領域では S0 は(2)式で表せる。
(2)
 免震建築物では1次有効質量が全質量に等しいため従来のRt曲線よりも(2)式のベースシア係数が大きくなると言われている2)GS は工学的基盤からの表層地盤の増幅係数である。計算は精算法、簡略法の2通りが選択できる。精算法は地盤の非線形特性を考慮した1次元波動論に基づいた計算であり地盤調査が必要である。簡略法では1種地盤でGs=1.35、2種地盤で2.025と直接係数が与えられる。文献4)では地盤増幅の計算におけるいろいろな問題点(例えば、2層モデルの妥当性、土のひずみ依存性、工学的基盤の定義・運用の恣意性など)が指摘されている。
 同図中には簡略法による地盤の増幅係数を用いて描いた地盤種別ごとの加速度応答スペクトルも示されている。2種地盤での応答速度レベルは165cm/sとなり、これまで免震建物の設計で用いられてきた入力レベルよりも相当大きいため、地盤の増幅係数を精算法により求めることが必要になる。
  Fh はダンパーの減衰効果による加速度の低減率であり(3)式で規定される。 hd は免震層の等価粘性減衰定数。 Fh は0.4より小さくはできないようになっている。
(3)
 図2には、図1の加速度応答スペクトルに(3)式の Fh を乗じて得られる加速度応答スペクトルSaと変位応答スペクトルSdの関係を示している。ダンパーの等価粘性減衰定数 hdFh )は、5%(1.0)、10%(0.75)、15%(0.6)、20%(0.5)、27.5%(0.4)の5水準を選んでいる。地盤の増幅係数Gsは簡略法を用い、地域係数Z=1.0としている。第1種地盤であれば、等価減衰を15〜20%程度確保できれば、周期4秒でも応答変位は40cm以下となる。一方、第2種地盤の場合、同じ条件であれば50〜60cm以上の応答変位になり、もし等価減衰を30%近く確保することができれば応答変位を40cm程度に抑えることはできる。





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