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設計者のための免震入門(13) 免震部材の製品検査と施工
 
 
おわりに
 免震部材の性能評価にあたっては、
・限界性能(圧縮・引張、水平方向)をどのように定義し、確認するのか
・試験データからの特性値の抽出方法
・その中で設計範囲としてどこまでを考えるか
・品質を確保し維持していくためにはどうすれば良いか
・試験装置の性能限界と縮小モデル(相似則)の妥当性
・耐久性の評価
など非常に広範囲な問題となる。
 このような問題に、設計者、メーカー、行政がそれぞれどのような役割や連携をもって対処していくのかを考える必要がある。
 アメリカのように大型試験装置を所有している公的機関による性能評価体制と試験方法が整っていない我が国はどういった姿が適切であろうか。
 部材認定制度は必要であろうか。認定制度がなくても積層ゴムは製造され、免震建築は建設されてきた。部材認定の結果、部材性能や免震性能は向上したのか? 制度が与える影響についてきちんとした評価をする必要が行政側にあるのではないか。積層ゴムのISOは最終段階であり、数年後にはそのままJISとなる可能性が高い。その結果、JIS製品であるということで、同じ性能であることが保証できるのか。積層ゴムのJISができれば認定制度は廃止されるのか。そうすると積層ゴムを製造する工場を認定するということもおこるのであろうか。
 積層ゴムに関する部材認定では、形状まで含めたところに本質的な誤りがある。材料認定であれば、ゴム材料の認定だけにしておけば、積層ゴムの設計にかかわる複雑な問題にかかわらないですんだと思われる。この点はISOでも同じである。
 性能評価を行う上で最も困難なのが、限界性能の把握である。免震建築大国として、公的な大型試験装置がないのはおかしいのではないか。直径1500φのような大型の積層ゴムを用いた超高層建築が多く建設される現状において、そのような免震部材の性能評価がどのようになされているのか? 設計範囲の特性は試験で確認しているし、設計変位は直径に比べても小さいので十分な安全率を有しているという判断であろうか。工学の基本はきちんと確認するということにあるのではないか。
 免震部材にそこまで厳しい製品検査は必要ないという意見も耳にする。現場打設のコンクリートの品質あるいは鉄骨骨組の品質よりも高い品質と検査が行われているとも言われる。しかし、免震部材は大地震時の人命と財産の保護を確保するためには、十分な品質と耐久性が確認されていることが必要である。大地震の時に機能を発揮できない免震部材では取り返しがつかない。
 免震構造が我が国で誕生して20年、社会的に受け入れられたのは阪神淡路大震災以降の10年である。まだ実績と実証データが少ない現状においては、きちんとした製品検査により免震構造の信頼性を確保することが一番重要であると考えている。そのためには、免震部材のメーカーだけでなく、設計者、施工者の協力とともに建築主の正しい理解が不可欠である。
参考文献
1) 日本建築学会:免震構造設計指針、2001年
2) H. W. Shenton : "Guidelines for Pre-qualification, Prototype and Quality Control Testing of Seismic Isolation Systems", NIST, PB-96-193658,1996.1
3) (社)日本免震構造協会:JSSI免震構造施工標準、2000.5
4) (社)日本免震構造協会:免震建物の維持管理基準、2001.5





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